三上敏視『神楽と出会う本』
ピアノもバイオリンも、幼少時のお稽古事はことごとく挫折した私だが、楽や舞を愛する気持ちだけは人一倍ある(と思う)。
その上、人類学&民俗学徒の端くれでもありたい人間には辛抱たまらんのが、刊行されたばかりの三上敏視氏による『神楽と出会う本』だ。
日本の民俗音楽が、安定感ある稲作系のズンドコ・リズムばかりだと思ったら大間違い。「島」や「山」には、夜を徹してグルーヴィーなお囃子が演奏される、「まるでレイヴ」な神楽がまだまだ残っている。
ミュージシャンでもある三上氏ならではの、マジメ一辺倒な研究書ではなかなかお目にかかれない秀逸な解説を目にすれば、神楽に特に興味のない(というか存在さえ知らない)ジャズフリークやロックファンも、興味を抱かずにはいられないはずだ。
──山口県の三作神楽には十拍子パターンのお囃子がある。太鼓が五拍のパターンを繰り返し、笛がその二倍の十拍でワン・パターンなのである。ジャズの名曲「テイク・ファイヴ」と同じように、二拍子と三拍子の組み合わせのノリなので、変拍子の違和感はない。(中略)
これがさらに8ビート系とシャッフル系に分かれ、16ビートっぽくなったり、シンコペーションが付いたり、休符が付いたり、まれに三連符が入ったりして組み合わされることで、全国各地に多様なバリエーションが育っているのである。(4章:神楽の音楽とお囃子)
ほら、読みたくなってきたでしょ?
伝統芸能界の「フジロック」、毎年12月に奈良・春日大社で催される春日若宮御祭(かすがわかみやおんまつり)の話も書きたいけれど、それはまた今度。
『神楽と出会う本』
三上敏視:著
発行:アルテスパブリッシング
A5判 240ページ 並製
定価:2,200円+税
ISBN978-4-903951-22-5 C1073
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