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春慶塗の職人さんに会う。

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「チャイナ」が陶磁器なら、日本を代表する工芸品として海外では「ジャパン」と呼ばれ、高く評価されているのが、日本製の漆器。

とかく「晴れの日のための」「扱いが面倒そう」「高そう」など、日常使いには向いていないと思われがちな漆器だが、香辛料も油脂もどんとこい、毎日ガシガシ使ってもそうそう簡単には割れない、欠けない、(もちろん)錆びない、と、モノグサ派にはうってつけの食器なのだ。

しかも手に取り、椀の縁に唇をつければ、陶器も磁器も及ばない、柔らかく滑らかな、官能的といえるほどの触感にうっとりする。

漆は一度乾燥すると酸、アルカリ、アルコールなどの薬品に侵されず、防水・防腐性に優れ、熱や衝撃から器を保護する理想的な塗料として、日本列島では縄文時代前期、約5千~6千年前にはすでにその利用が始まっており、福井県の鳥浜貝塚からは堅い薮椿に鮮やかな朱漆を塗った飾り櫛が出土している。

この漆をテーマに、12月末から始まるある展覧会(詳細は公式発表後に本ブログでもお知らせします)に関わる取材で、岐阜県高山市の春慶塗を取材してきた。

それは16世紀の初頭に遡る。大工棟梁・高橋喜左衛門が偶然打ち割ったサワラに生まれた美しい枇目(へぎめ)を活かして盆を作り、藩主・金森可重(かなもり・ありしげ)の息子、重近(しげちか)に献上したところ、重近は御用塗師(ぬし)の成田三右衛門に塗りを施させた。木目を透かす「透き漆」仕上げが、あたかも瀬戸焼の茶入「飛春慶(とびしゅんけい)」を思わせる肌合いであったことから、可重が「春慶塗」と命名。これが春慶塗の始まりとされる。

輪島などに代表されるマットで不透明な漆ではなく、透明な漆の皮膜の下に、木目が透けて見えるのが春慶塗の特徴。

塗師が上塗りに使う漆は、木から掻き取ったものを、業者が2回程度濾して、不純物を取り除いた状態で販売される。しかし今回取材させていただいたTさんという塗師の方は、掻き取ったそのままの漆を自ら濾し、その時々でつくる製品の性格、天候などの条件に合わせて、漆の乾く速度や粘度、色味などを調整している。

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写真は吉野紙という和紙を7枚重ねたもので漆液をキャンディ状に包み、ゆっくり絞って、不純物を濾し取っているところ。だいたい3回繰り返すことで、上塗り用に使えるクオリティになるという。

埃や温度、湿度がコントロールされた作業部屋でわくわくしながら漆濾しの作業を見ていたのだが、案内してくれた問屋さんをはじめとする関係者の方々は窓ガラス越しにこちらを見ているだけで、入室はしない。取材しやすいようにという気遣いかと思っていたら、あとで「室内には漆の粒子が飛んでるでしょ。敏感な人は3日後くらいにかぶれるんですよー」と言われた。先に教えて下さいよ、先に。

というわけで戦々恐々「3日後」を待っている。月曜の夜までに何もなければセーフ、のはずなのだが。あれ、なんか頬のあたりがむずむずするような……。

追記:
お師匠様からのご指摘を受け、ルビ「ひしゅんけい」→「とびしゅんけい」、茶壺→茶入に訂正いたしました。まだまだ勉強、でございます。ぺこり。

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