原研哉 「白」 meets Olafur Eliasson
オラファー・エリアソンつながりで、もうひとつニュースを。
グラフィックデザイナーの原研哉さんが2008年に刊行した日英併記の著作『白』の英語版、ドイツ語版が、スイスの出版社Lars Müller Publishersから刊行されたのだが、その帯文はオラファーが書いている。
Today, we seem to be experiencing a rationalisation of the senses. The art of refinement has been half-forgotten, and attentiveness to detail, absorption, and slow engagement are neglected. In his captivatingly light text on the concept of “white,” Kenya Hara counters this tendency. His personal journey through concepts, objects, and practices such as emptiness, paper, and the Japanese tea ceremony not only opens up a field of heightened nuance and refinement. By melding everyday observations with reflections on Japanese aesthetics and sensitivity, he also amplifies the need to critically revise our understanding of the senses. This important little book thus challenges the simplifications that inform much present-day thought concerning what can be felt, experienced, and emotionally negotiated.
Olafur Eliasson
今日の我々は、五感を理屈で理解しようとしているように思える。感覚を研ぎ澄ますことを半ば忘れ去っている。細部にまで注意を払うこと、集中し没頭すること、ゆっくりと事を行うことを軽んじている。原研哉は、素晴らしく軽妙な筆致で「白」という概念を語りながら、こうした風潮に異を唱えている。エンプティネス、紙、茶道など、コンセプトやモノ、あるいは、実際の行動によって展開する彼の私的な旅は、研ぎ澄まされたニュアンスや洗練への地平を拓くにとどまらない。彼は、また、日々の観察に日本的な美意識と感性への思いを融合させることによって、五感に対する我々の理解を大きく修正する必要があることも知らしめている。この小さくて重要な本は、かくして、何が感じ取られ、実感され、情感を伴った交流がなされていくことができるかについての今日的な考え方をシンプルに伝えていくことにチャレンジしているのである。
前著『デザインのデザイン』の英語版『Designing Design』も同社から刊行されており、その時の帯文はリ・エーデルコート、ジョン前田、深澤直人、ジャスパー・モリソンの各氏だった(ちなみに『白』日本語版の帯文は内田樹、茂木健一郎の両氏)。
と、思ったらジャスパーが金沢でのオラファー・エリアソン展の二次会に来ていた。オラファーとジャスパー、エリアソンとモリソン、蟹をつつきながら仲良く話し込む脚韻コンビ。
ちなみに私は本作掲載の黒樂茶碗、長次郎「勾当」(樂美術館蔵)の撮影コーディネーションを担当している。撮影は上田義彦さん。
Lars Mueller Publishers, 2,658円、2009年12月1日
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