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「椀一式」プロジェクト [1]

Wan_issiki
撮影:石井宏明(このエントリーすべて)



予告だけしてそのままになっていた「椀一式」プロジェクト、やっとご紹介できるところまでたどりついた。私自身は書籍の編集、執筆を担当している。

これは岐阜県の産業支援機関である(財)岐阜県産業経済振興センター デザインセンターの委託を受け、2008年度から日本デザインコミッティーが飛驒春慶塗の職人たちと商品開発に携わってきたプロジェクト。

一般的な漆塗として知られる黒漆、朱漆に対して、木目の美しさを見せる透明な漆塗の技法を代表するのが、飛騨の地に蓄積されてきた高度な木工の技術と質の高い木材、そしてそれを活かす透漆塗の技法とが五分で結びついた飛騨春慶である。

江戸時代初期に飛騨を領国とした大名・金森家から出た茶人の金森宗和とゆかりが深く、茶道宗和流と結びついて発展してきたが、近年では使われる場面が激減、衰退の一途を辿っている。

この春慶塗の可能性を追求すべく、日本デザインコミッティの8人が商品開発のプロジェクトに参加した。

ディレクションを担当した原研哉による制作のテーマは、「椀一式」。

重箱や茶道具のような、普段の生活から遊離した対象物ではなく、最も身近な「汁椀」であれば、無理な背伸びをしなくてもデザインできる。現代の日本の暮らしに最も密接な漆器は「汁椀」だからだ。どうせならそこにふさわしい「飯碗」を見立てて盆というステージに載せ、箸を添えて「一式」としてしつらえてみようという趣向である。

 日常使いの「汁椀」と「飯碗」ならば、少々値が張っても買い求め、日々の食卓に供するゆとりは持ちたい。日本人なら皆、潜在的にそう思っているはずだ。だからこれを「椀一式」のしつらいと称して、余裕のある大人の一つのたしなみとして提案する。おそらくは「夫婦茶碗」という言葉が陶磁器の世界で果たしてきたような、ささやかだが根強い広告効果のようなものが、「椀一式」という言葉にも宿るかもしれない。そんな風に考えたのだ。

単行本『椀一式』前書きより(原研哉)

深澤直人、原研哉、岩崎俊治、川上元美、小泉誠、黒川雅之、松永真、佐藤卓の8名が、この企画に参加。汁椀、箸、盆の3アイテムをそれぞれデザインし、飯茶碗は岐阜県内の窯から選んだ陶器を組み合わせている。

購入可能な8種類の作品は、2009年12月27日(日)〜2010年1月25日(月)まで、松屋7階・デザインギャラリー1953での飛驒春慶×日本デザインコミッティー「椀一式 − 使う漆器へ」展で展示され、展覧会と合わせて同タイトルの書籍も刊行される。さらに、2010年1月14日(木)銀座3丁目・アップルストア銀座で、原研哉、小泉誠らによるトークショーも開催される。

このブログでは真俯瞰の写真しかご紹介できないのだが、書籍では写真家・石井宏明さんが下から横から舐めるように撮影された作品写真、さらに下北沢の日本料理店「七草」店主、前沢リカさんに料理制作を担当していただき、それぞれの作品に盛りつけた状態で撮影した写真などをたっぷりご覧いただける。

さらに原研哉さんと平松洋子さん、黒川雅之さんと西田恵一さん(木地師)、滝村貴紀さん(塗師)による鼎談、小泉誠さんと佐藤卓さんによる対談なども収録され、読み応えも十分。展覧会と併せてお楽しみいただきたい。

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深澤直人

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原研哉

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川上元美

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岩崎信治

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黒川雅之

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小泉誠

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松永真

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佐藤卓


【展覧会】
第661回デザインギャラリー1953企画展
飛驒春慶×日本デザインコミッティー「椀一式 ー 使う漆器へ」

2009年12月27日(日)〜2010年1月25日(月)
松屋7階・デザインギャラリー1953

東京都中央区銀座3-6-1 電話 03-3567-1211(大代表)
共催:日本デザインコミッティー、(財)飛驒地域地場産業振興センター、(財)岐阜県産業経済振興センター デザインセンター(通称:オリベデザインセンター)

展覧会担当:原研哉(プロジェクト+展覧会+書籍のディレクションを担当)
出展:飛驒春慶ひのき会
 代表:日進木工(株)代表取締役 北村 斉
 職人:中屋憲雄、西田恵一、滝村紀貴、矢島浩(日進木工)、他

参加デザイナー(日本デザインコミッティーメンバー):深澤直人、原研哉、岩崎信治、川上元美、小泉誠、黒川雅之、松永真、佐藤卓

【書籍】
飛驒春慶×日本デザインコミッティー「椀一式 ー 使う漆器へ 」

発行:日本デザインコミッティー
ディレクション:原研哉
編集協力:橋本麻里
写真:石井宏明
出版社:実業之日本社
A6判/151ページ/2010年1月1日発売予定
販売価格:2000円前後

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