朝日新聞出版 『allora』第2号 特集 「飾る」京都、「侘び」の京都
京都には──そして日本には
どちらか一方だけでは成立し得ない
2種類の美意識の系譜がある。
削ぎ落とし、控え、隠す「侘び」と、
色彩、意匠、光を加え尽くす「飾り」。
この両輪の美をコントロールした千利休、
長谷川等伯、伊藤若冲らを手がかりに
冬こそ、の京都を楽しみ尽くす。
(『allora』2号特集総トビラより)
朝日新聞出版の新創刊女性誌『allora』2号が、12月7日(月)発売になります。特集は「飾る」京都、「侘び」の京都、というわけで、京都特集。
あまた京都特集を謳う雑誌がある中で、『allora』では京都の寺社や離宮を訪ねる時のキーワードとして、「飾り」と「侘び」で分けてみた。日本の美だ の伝統だのを語るとき、思考停止した書き手ほど安易にワビサビと言いたがるものだが、「日本」や「京都」はそれほど単純にできてはいない。
ブルーノ・タウトは一方を激賞して一方を罵倒したけれど、桂離宮があれば、反対方向に日光東照宮あってこそ、の「日本」なのだ。
深草・石峰寺の敷地内に置かれた石仏群。伊藤若冲が晩年、自らデザインし、寄進したもの。同時代の絵師、円山応挙も見学に来たことがわかっている。
それに私たちはまだ、「飾る」ことと「侘びる」ことを、多くの点で誤解している。わかりやすい進歩史観的な視点に立てば、単純なものが複雑化していく、つ まり「侘び」→「飾り」と考えがちだけれども、実際は人間を超えたものへの畏怖や崇敬を表現する、どちらかといえばプリミティブな様態としての「飾り」の 後で、削ぎ落とし磨き洗練させていく「侘び」が出現する。
より過激な書き方を選ぶなら、「侘び」は人為の限りを尽くした、「飾り」の最終形態とも言える。千利休の茶室が小さく簡素に見えるからといって、カンタン にできると思っていたら足下をすくわれる。簡素に見せるためにかけた手数(てかず)の多さは、あのゴテゴテ東照宮にさえ負けていない──と考えるべきなの だ。
実相院名物、「床みどり」。磨き込まれた床に屋外の滴るような緑が映り込む。秋には真紅の「床もみじ」が堪能できるが、雪の降った日にのみ見ることのできる、凍った湖面のような景色も美しい。
実相院内の襖絵。狩野派の絵師の手によるものだが、部分的にしか名前がわかっていない。この鶴図はアノニマスだが、非常によく描けている。必見。
そういう意味で、この特集では桂離宮を「侘び」部門にフィーチャーしているけれど、あれは究極の「飾り」系建築だよね、というのが、今回特集冒頭でわかり やすく「侘び&飾り」論を解説して下さった、茶人であり日本美術史家でもある千宗屋氏とお話ししての結論だ。いつか桂離宮/東照宮問題を本気で取り上げた いですね、と千さん。いいですねえ。楽しみ。
そんなこんなで、特集では桂離宮、大徳寺高桐院、仁和寺遼廊亭、妙心寺龍泉庵、正伝寺、実相院、園城寺勧学院、細見美術館、角屋などをご紹介。2010年 1月9日〜3月22日までの、文化財の「冬の特別公開」情報や、ご紹介した寺社の近くの美食情報、お土産物なども併せて掲載している。
寒いといえば寒いけれど、人も少なく京都が素顔を見せる冬こそ、旅のベストシーズンとも言える(食べものが一番美味しいのも冬だし)。ぜひ書店でお買い求めの上、旅を組み立てる際の参考にしていただきたい。
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