木地の弁当箱。
「できれば大作でなくても、ちょっとの内容でも写真だけでも更新してくれると凄く嬉しいです」という温情あるコメントをいただき、すぐその気になってブログを更新するあたり、おだてれば木に登るというあの生物のようなワタシである。ぶひ。
というわけで、1週間ほど前に仕上がってきた弁当箱の話を。
これは拙ブログでも何度か書いた「飛騨春慶プロジェクト 」の余録として作っていただいたもの。何も塗っていない木地曲の弁当箱はご覧になった方も多いと思うが、こちらは木地に紅の透き漆をかけている。仕上げはツヤピカにせず、ほんのり艶のあるセミマット状態で寸止めにしていただいた。白木の木地も美しいが、紅い漆を透かした木地も十分に魅力的だ。
薄い板同士を重ねた部分を樺桜の樹皮で綴じた二段重ねの楕円形弁当箱は、1段で使うこともできる。弁当箱とはいったが、弁当を入れる必然はないのだから、お茶の稽古で使う和菓子をピックアップする時に入れたらいいかも、などと妄想している。
もともとは、プロジェクトの過程で、松永真さんのリクエストによってこの原型が作られた。結局それが陽の目を見ることはなかったが、検討会の席上でひと目 見て気に入り、職人の方に「これこれこういう仕様で」とお願いしていたものが、最近になって完成した、というわけだ。ご協力いただいた中屋憲雄さんには、 心から感謝を。ありがとうございました。
職人さんと直接でも、間に店が介在する場合でも、こちらの要望を伝え、技術や材料や予算(これ大事)、納期とのバランスを取りながら仕上がってきたものへ の満足は深い。たぶん、ものとしてのつきあいも長くなるだろう。そうやって無名の職人と無名の注文主の切磋琢磨が何世代も積み重なった末に、「利休形」の ような洗練と普遍の極みに達した形が生まれるのだ。
てことは、私のささやかな散財も日本文化の更新と向上に寄与しているに違いない。ああ、またいいことしちゃったぜ。ぶひぶひ。
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コメント
コメントのお返事ありがとごさいました。
僕は今までどうしょうもなく、くらない事ばかりやってきて、30過ぎてやっとここ最近になって日本の文化や芸術に興味を持ち始めたくらいで、何かコメントをしたくても知識も学もないのでblogを楽しませて貰うだけで何のコメントすることはできませんが、これからも無理せずに、お仕事頑張って下さい。
杉本博司さんとか日本のギャラリーでもギャラリー小柳の作家さんとか凄く惹かれるのでとてもうらやましいです。笑
投稿: | 2010年2月 7日 (日) 18時56分
すいません、さっきのコメントの名前書き忘れてしまいました。失礼しました。(汗)
投稿: 聡 | 2010年2月 8日 (月) 01時27分
椀一式プロジェクト 愉しませて頂きました。
飛騨高山っ子なので、春慶塗ラブなのです。
桜の樹皮で綴じる曲げ木細工は懐かしいです。
私もこちらを 特注したいですけど、これは
やっぱりプロジェクトの裏側の特権ですよね...
眼福です♪
投稿: panda | 2010年2月24日 (水) 23時36分