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編集ワークショップ補完計画(1)

9月26日、SPBSでの編集ワークショップに、ゲスト講師としてお招きいただいた。

編集者であれライターであれ、基本的には「ギャラをもらって仕事する」以上に切実なトレーニングはないと思っているのだが(お金は「払う」より「もらう」方が、遙かに巨大な圧力や自覚として能力の向上に作用する)、一部の技術については伝えられることもあるので、お引き受けした次第。

そこでお話ししたことのひとつが「依頼状の書き方」である。仕事柄、依頼状をいただく機会は少なからずあり、依頼状を書く機会は倍して多い。実は雑誌の記事の執筆においては、ベストな依頼状が書けたら、その仕事は半分クリアしたも同然なのだ。

ただし「みんなが知ってそうな有名人」のリストを作って上から順に依頼状を送りつけていき、運良く引き受けてくれた人に取材するような記事の場合には、以下の内容は一切当てはまらないので、ご注意を。

ある媒体の、ひとつの特集の中に配置される複数の記事には、それぞれ担うべき明確な役割がある。そして媒体の特徴、特集の内容、個々の記事が担う役割を理解していれば、取材対象は自ずと絞られてくる。「この人しかいない」という対象が思い浮かばない場合、媒体〜特集〜記事の内容を把握し損ねているか、ふさわしい取材対象について無知であるか、どちらかだろう。

「この人しかいない」というドンズバの対象に思い至ることができれば、依頼状は自ずと、「なぜ今、この媒体がこの特集を作り、またその記事の取材対象があなたでなければならないか」を、情理を尽くして説明するものになるはずである。

「あなたでなければ」の説明として、取材対象の仕事内容や興味関心について言及し、この記事が取材対象のアイデンティティの核心に触れるものであると立証することが、最強の説得材料となる。

依頼者が、取材対象について、どれほど本質的な理解を有しているか。理解しているからこそ依頼しているのだと、その理路を相手が納得すれば、よほどスケジュールが合わないとか、謝礼が非常識に安いとかいう理由でない限り、引き受けてくれるはずだ。

なぜなら(ほぼ)誰でも、どんな成功者でも、「自分とその仕事の意義は完全には理解されていない、正当な評価を受けていない」と感じているから。「理解や承認への欲望」が満たされることは、誰にとっても最大の「報酬」となり得る。空疎な賞賛の言葉や無駄な熱意の大盤振る舞いは、一文の役にも立たない。

自分が引き受けた仕事や掲載媒体についてそれだけ理解し、取材対象についても理解していれば、最終的な原稿も自ずといいものに仕上がるに決まっている。

ベストな依頼状を書く、というのは、そういう意味のことなのです。

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