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爆笑文体模写 カフカ「変身」のバリエーション

2000年頃に2ちゃんで盛り上がっていた爆笑文体模写のスレッドを
膨大にコピーしてましたが、その中からより抜き(?)名作を一部
アップしてみました。

正統派の名作はこちらのサイトで公開されています。

10 名前: アーサー・C・クラーク 投稿日: 2000/08/05(土) 02:44
タプロバニーでは沈んだ太陽だが、宇宙では太陽の高度に気をもまされる必要はなかった。
その太陽光に照らされた住居の一室で、グレゴール・ザムザは目を覚まそうとしていた。
惑星アパートメント---周囲に広がる緑もなく、足の下に土はない。
ただそこには闇夜につつまれた無窮の静寂のみがある。
地球の軌道をぐるりと取りかこむリングの甲殻が太陽と地球の放射熱で暖められ、
まるで寝返りをうつようにねじれる。だがこれは設計者たちの計算どおりだった。
ねじれは地球の自転にそって1日かかってリングを一周する。
ねじれた部分がふたたび太陽熱の洗礼を受けて身をよじるころには、もう充分に冷えているのだった。
ねじれが起こすアパートメントのおごそかなきしみが、ザムザを夢から呼び覚ました。
アパートメントに住む者ならば誰でも目覚ましがわりに聞いている音だった。
ザムザはあたりをそっと見まわした。首をひねりながら、彼は胸から腹部へ、
そして手足へと視線を走らせた。彼がその光景を理解できたのは、もうしばらく後のことだった。
そしてザムザは知ったのだ---ちょうどこの瞬間に地球上の誰もが知ったように、
自分がもはや普通の市民の暮らしを送れないことを。しかもそれは、幾千万年もの年月を越える
旅のように絶望的であることも。その褐色の甲殻---研究室で見なれている標本とは大違いだった
---まるく膨らんで節のついた腹部は、まるで悲鳴のように小さく音を立てていた。
彼はもはや人類ではないのだ。


13 名前: 安部公房 投稿日: 2000/08/05(土) 10:34
 いつもどおりの朝になるはずだった。
 何時間眠っていたのか覚えていない。ベッドの足もとで誰かがタバコをふかしている夢をみた。煙が邪魔だから追い払おうと思って、右手でベッドの下の空間を半円状に払った。良く研いだ鎌で柔らかい青草を薙払う、意外なほど軽快な切れ味。
 手を眼の前にかざしてみた。これは何だろう。黒光りする殻。硬く、しかししなやかな、畳針のような爪。
 左手も持ち上げてみた。空気を切り裂く音。こっちもだ。
 左脚を突っ張って、尻を支点にして身体を右に傾けようとした。思いがけないことに、背骨の20センチメートルくらい下で身体が支えられている。北京鍋を背負った感覚。身体を反対側に切り返してみると、背の曲率の見当がついた。もともと猫背だったので、そんなに深刻ではない。それにゆったりした上着を着ればあまり目立たないだろう。
 それにしても手はどうしたんだろう。心因性の幻視だろうか? そうかもしれない。ここ3週間ほど、休暇もなかったのだ。
 起き上がろうとして、ちょっとばかり頭をもたげると、まるくふくらんだ、褐色の、弓形の固い節で分け目を入れられた腹部が見えた。そういうことか。おれは甲虫になっていた。



17 名前: サザエさん 投稿日: 2000/08/06(日) 00:58
マスオです!
もう20年も前から妻が裸足で猫を追いかけたり、
買い物にでかけて太陽に笑われたり、
ご近所の手前、神経をすり減らす毎日を過ごしています。
これこそが生きることの不安、という奴でしょうか?

さーて、来週のサザエさんは、
「カブト虫」
「城」
「アメリカ」
の3本です。



21 名前: 「ムー」総力特集 投稿日: 2000/08/07(月) 11:25
人間毒虫化現象の謎を追う
 かふかあきお

チェコ国プラハにて、人間が毒虫化するという奇現象が報告された。
果たしてそれは霊の祟りか、黒魔術の呪いか、それとも……
人間毒虫化現象の裏に隠された恐怖の神秘現象を追う!

第1章 突然の毒虫化は謎に満ちていた

Д 朝起きたら虫に……

 その日、グレゴール・ザムザ氏は寝覚めの悪い朝を迎えた。不安な夢を見たのだ。このような悪夢というのは、予知夢の可能性がある。わたしたち人類が潜在的に有している予知能力を、ザムザ氏も知らず知らずのうちに発揮していたらしい。

 しかし、ザムザ氏の身に起こったことは、あまりにも不条理極まりない現象であった。なんと、氏の肉体は毒虫に変型していたのである!

 一体、人間が毒虫に変化するなどということが存在するのだろうか? いや、それはまぎれもない事実なのだ。我々はまずその事実を受け入れ、しかるのちにその背後に潜む「神の意思」を探らなければならない。

Д それはまさに毒虫

 固い甲殻の背中を下にして、仰向けになっていたザムザ氏。少し頭をもたげると、なんと、そこに見えたのは、まるくふくらみ、褐色の、弓形の固い節で分け目をいれられた腹部だったのだ! これが驚かずにいられようか? まさに、自然を無視し、破壊し続けてきた現代人に対する警告ではないだろうか。わたしたちはこの事実から目を逸らしてはならない……。



30 名前: 尋常小学教科書 投稿日: 2000/08/07(月) 20:35
彼夢ヲ観ルニ酷ク不安ヲ覚エタリ朝目覚ムニ己カ寝床ニ在レトモ其ノ身体巨大ナル毒虫ニ
変スヲ見ツケ得タリ其ノ形円ク堅キ背甲ヲ持チ背ヲ下ニ在リキ彼其ノ心一ツニテ寝台ヨリ
出スルヲ望ムトモ能ハス以テ自ラノ腹ヲ観スニ褐色ノ弓ヲ多数並フカ如ク膨レタ体節ヲ認
ムニ止マリタリ



31 名前: 梶井基次郎 投稿日: 2000/08/07(月) 20:36
 朝、起きると、俺は巨大な毒虫になつていた!
 どうして、ただの服地の販売員の俺、グレゴオル・ザムザが、普通に俺の小つぽけな部屋で寝て、−−奇妙に落ち着かない夢を見たとはいえ−−目覚めると、蟲になつているのか。とてもぢやないが信じたくないぢやないか。俺はこんなことが他ならぬ俺の身体に起きるなんて信じなかつた。
 仰向けのままベツドから俺はどうしても起き上がれなかつた。起きようともがくうちに、俺の目に映つたのは、茶色の弓を並べたような堅そうな段になつて膨れた節、節、節、の俺の腹だつた。その腹が俺の動きに合はせて起伏を変へてゐる!



35 名前: 金正日を賛美する北朝鮮自己陶酔文体 投稿日: 2000/08/08(火) 20:21
革命の聖山白頭の天空高く、漆黒の闇に浮かぶ眩い希望の星が、

我々の無限の栄光を高らかに謳歌する夢を見られた、我が民族の

偉大なる指導者キム・ジョンイル同志が爽やかに目覚められると、

独創的革命理論、不滅の主体思想、高邁なる共産主義的徳性、
天才的軍事戦略、芸術的な縮地法、慈愛あふるるマルクス・レーニン主義、

という六大機能をもつ六本足の百戦百勝の甲鉄将軍に変身されておられ、

革命と建設の英雄誕生と森羅万象が祝福する中で、突如赤い陽光が

燦然と輝き、米帝打倒の革命の炎が全山河を覆った歴史的な

その朝、朝鮮の未来を明るく照らす旭日が力強く昇っていった。



44 名前: 男塾 投稿日: 2000/08/10(木) 04:20
富樫・虎丸
「げえ〜〜〜〜っなんじゃああれはーーっ
 毒虫と化した奴の体がまるでダンゴムシのように丸まって
 雷電の上にのしかかって回転してやがるーーーーっっ!!!」

卍丸
「むぅ・・・こ これは奥義圧殺挫無座・・・!!
 ま まさかこの奥義を使える者が現代にいようとは・・・」

〜奥義・圧殺挫無座〜
中国拳法には猛獣の姿を模して戦う戦闘術が多々あるがその中でもこれは毒虫の
姿を借りたものでありその異様さとその恐ろしさで知られている。
かつて清朝中国において高名なる武人・呉轟龍挫無座(ぐれごおるざむざ)は
修行を重ねることにより甲殻状の鎧をまとい毒虫の姿を模した戦法を編み出した。
中でも相手に毒を吐きかけて身動きの自由を奪い、甲殻の鎧で丸まって体当たりを
行う奥義「圧殺挫無座」を得意とし、この技を使ってとどめを刺すことを好んだと
いわれる。この「圧殺挫無座」がひとたび放たれれば絶対に逃れることは出来ない
と言われており、相手の息の根を止めて彼岸へ送るまで技が終わることはないこと
から人々はこの技を称して
「圧殺挫無座も彼岸まで」
と例えたというが、これが日本に間違った形で伝わり気候の移り変わりを表現する
「あつささむさも彼岸まで」という言葉となったことはいうまでもない。

(民明書房館・『吃驚!世界の毒々拳法』より抜粋)

富樫・虎丸
「あわわわわ・・・どうすればいいんだこのままじゃ毒で動けないまま
 雷電はペシャンコに潰されちまうぞ〜〜〜雷電ーーーーーっっ!!!!」



84 名前:虫の来歴 投稿日:2000/08/25(金) 09:16
一寸の虫にも宇宙の全過程が刻印されている。後年グレゴール・ザムザが毒虫に変身するに至った最初のきっかけは、スイスはバーゼルの某研究室で、ひとりのポスドクから聞いた話である。
針金細工に渋紙を貼りつけた趣の顔面にあって、そればかりが敏捷に動く眼でザムザを眺めた男は、すっかり肉が削げ落ち痩せごぼうみたいになった指に傍らのゴキブリを摘んでみせると、これは種別するならチャバネゴキブリというゴキブリであると講釈を述べ、いまわれわれが眼にするのに似たゴキブリは古生代に初めて地上に姿を現わしたものである、したがってこのゴキブリも恐竜より古い種族の末裔である、と述べたあと、およそ次のような事柄を語った。
君は普段路傍の虫に気をとめることなどないだろう。蝶や玉虫ならばまた話はべつだろうが、およそハエやゴキブリなどは詰まらない、ただ意味もなくうろついているもので、邪魔にこそなればわざわざ手にとって眺めてみる価値などないと考えているのであろう。だがそれは違う。変哲のない虫けらにも 君は普段路傍の虫に気をとめることなどないだろう。蝶や玉虫ならばまた話はべつだろうが、およそハエやゴキブリなどは詰まらない、ただ意味もなくうろついているもので、邪魔にこそなればわざわざ手にとって眺めてみる価値などないと考えているのであろう。だがそれは違う。変哲のない虫けらにも生物の進化の歴史が克明に記されているのである。たとえば君はキイロショウジョウバエ、Drosophila Melanogaster 、がどうして発生するかを知っているか?卵の中で始めにギャップ遺伝子が働き、その産物は胚を大ざっぱに分割する。次にペア・ルール遺伝子が働き、セグメント・ポラリティー遺伝子が働いて体節が区切られる。胚はふ化して幼虫となり、幼虫は蛹化して蛹となる。蛹の中では劇的に体が作り直され、受精から約9日で成虫が現われる。と成虫はまた卵を産み、卵は幼虫になり蛹になり成虫になり、さらには再び卵を産んで世代を繰り返す。虫は一瞬も静止することなく変化している。素材は絶えず循環している。生物が進化しているのは君も知っているだろう。ショウジョウバエの発生に働く遺伝子とよく似た遺伝子は哺乳類も持っている。分子生物学を用いて、哺乳類の眼を作るのに働く遺伝子をショウジョウバエに入れることで、眼がたくさんあるショウジョウバエを作ることさえできる。ショウジョウバエも人間も、時間を遡れば、起源を同じくしているのだ。つまり君が何気なく眼にする一匹の虫は、およそ三十億年前、後に地球と呼ばれるようになった惑星に生命が誕生したときからはじまったドラマの一断面であり、物質の運動を刹那の形態に閉じ込めた、いわば宇宙の歴史の凝縮物なのだ。



108 名前:立花隆(科学系の作品群) 投稿日:2000/09/05(火) 06:53
この本の内容は昨年「文芸春秋」で私が書いてきた「毒虫体験」と
今年3月にNHKで放送された「毒虫になる私」から構成されている。
私は約一年間ほどNHKの取材班と共に集めた膨大な資料と
毒虫研究家の方々にインタビューした記事・毒虫になった方への
インタビューと仮想毒虫研究所で仮想的に毒虫体験を私自身が行ってみる、
と言った形で内容は進む。
テレビ版を見た方も多くいらっしゃると思うが、テレビ版とは違った内容に
なるとは思う。そもそもテレビで放送された記事は原稿用紙で言うと
たかだか数百枚ほどにしかならない。しかし私達が集めた資料は
それだけで本棚をまるまる一つ埋めてしまうものである。
したがってこの本にはテレビで放送されていないものを多分に
含んでいる。テレビで放送されたインタビューなどは
一人30秒で5、6人ほどであるが、実際に私がインタビュー
した人数は50人ほどで長い人は5時間近くになる。
それを本にするのだからテレビとは全く違ったものになる。

分からないところがあればどんどん読み飛ばして
いただいて結構だ。基本的な部分は注釈を読んでいただければ
きっと分かると思うし、それ以外はなんとなくでいい。
このような作品を書くときにはまず対象の知的レベルを
どの辺りにすればいいのかで悩んでしまう…

毒虫というとフランツ・カフカの「変身」を思い出す方が
多いと思う。カフカの小説ではグレゴールザムザが朝
目覚めてみると毒虫になり、結局は毒虫がザムザだと分かりながらも
最後に家族に殺されてしまうと言った作品だ。人が毒虫に
なり家族に殺されるといった話しは奇妙なことだが、
驚くべきことにまさにグレゴールザムザのように
家族に殺されてしまった人もいる。それがこれから
紹介して行く「やまだやまお」さんだ。
生前のやまださんは中堅出版社に入社5年目の
まだ若い方だったそうだ。写真を見ると…



120 名前:野口悠紀雄@超整理法 投稿日:2000/09/13(水) 18:16
足や腹部の固い節が増えてくると、その中には毎日使うものと長期間使用しないものがあることに気づく。
埋もれてしまった重要な足を不要なものの中から探すだけで1時間を要することも
あり、これほど無駄な時間の使い方はない。
そこで私は「押し出しファイリング」方式を提案する。
これは、私が不安な夢から覚めて毒虫に変身した朝以来、長年の試行錯誤を経て完成した方法である。
まず角ニの封筒を何枚か用意し、足と節を小分けにして収納しブックエンドに立てる。
使用後の足や節は直ちに封筒に入れて本棚の右端に立てる。以後、足や節を使用するたびにこの方法を繰り返す。
そうすると約1ヶ月後には、1ヶ月使用しなかった足や節を納めた封筒が自然にブックエンドの左端に溜まってゆき、後は左端に溜まった封筒を廃棄すればよい。
「押し出しファイリング」を実行すると1ヶ月でたちまち不要な足と節が片付き、元の姿に戻るという仕組みである。



121 名前:桜井亜美 投稿日:2000/09/15(金) 01:38
凄く息苦しくて目が醒めた。
—大丈夫、あたしはグレゴール・ザムザ、19歳だ。
記号のようにつぶやいて、何かを確認したかのように安心する。
昨夜開け放ったままの窓からは、蒼く澄んだ風が吹き込んでくる。

なんであんな夢を見たんだろう。とても苦しいのに、誰も助けてくれない。目を閉じても、赤や、黄色や、緑の光が容赦なく瞼を刺すように飛来してくる。
窓の外では、枯れ木に止まったカモメのように木蓮が白い花を咲かせている。甘い香りを運んでくる風を感じようと、あたしは起き上がった・・・つもりだった。
起き上がれなかった。あたしの体は、硬い甲殻で覆われた無機質な感触がした。首を持ち上げて、なだらかにカーブを描いているはずのあたしの体を見る。
お気に入りのカスティリアン・レッドのパジャマはそこになかった。ただ、茶色い殻があたしの体を包んでいた。
—こんなことあるわけない。
と心の中で絶叫する。ベッドの上をごろごろと転げまわっても、あたしの体に伝わる感触はやわらかいベッドじゃない。冷たく硬い殻だ。きっと、エゴイストで、意気地なしのあたしに与えた、神様の罰に違いない。



126 名前:ジェイ・マキナニーfeaturing源一郎 投稿日:2000/09/21(木) 13:25
 きみはそんな男ではない。
 夜明けのこんな時間に、そんな格好をしているような男ではない。しかし、
君がしているのは間違いなく「そんな格好」なのだ。君の格好といったら、こん
な感じだ。ストライプのパジャマはいつも通り。しかし、その袖から突き出よう
としているもの、それは毒虫のむすうの足だ。
 バスルームに入り、ボリヴィア製の強いコカインをひとつまみやりさえすれば、
何もかもがもっとはっきりとしてくるかもしれない。だがそんなことをやっても、
何もはっききりとはしてこないかもしれない。きみの内側で誰かの声がそう囁い
ている−コカインをどこから吸うつもりだ?君のそのぶざまなパジャマの下の、
脇腹に空いた穴からかい?



137 名前:柳美里@「命」 投稿日:2000/09/23(土) 23:33
 薄明かりのなかで目を醒ました。
 いつものように悪夢にうなされたわけでも、眠りが浅かったせいでも、なにかの物音や尿意によって起こされたのでもなさそうだ。わたしの内部の微かな気配、なにかが起こっていることを無意識のうちに察知して目醒めたのではないか、そんな気がした。
 額にてのひらを当ててみる。堅い。何日か前から微熱が続いていたのだが、忙しい時期にはよくあることなので無視していたのだ。皮膚が堅くなるなんてなにかの勘違いだろう。まだ寝惚けているのかもしれない。鏡で確認しようと起き上がる。けれど、わたしの体は起き上がるには無理があった。
 わたしの体は毒虫になっていたのだ。
 夏はいつもわたしを苦しめる。いい想い出の夏は記憶のなかに一度もない。夏を嫌い憎んでいるから、しっぺ返しを受けるのだろうか。今年の夏は、わたしを断崖ぎりぎりまで追いつめようというのか。これまで、錯乱して激情にかられて狂態を演じる人間の気持ちを理解することはできなかったが、今の私はまさに血腥い情念の中にいた。



176 名前:みつお 投稿日:2000/10/12(木) 03:12
いいじゃないか。
虫けらになったって。
だって生きてるんだもの。
いいじゃないか。
空を飛べるようになったんだもの。




200 名前:麻原彰晃説法 投稿日:2000/10/12(木) 20:13
人は死ぬ、必ず死ぬ、絶対死ぬ。死は避けられない。
この死をはじめとして、すべては無常であると。そうだね。
(信者)はい。
無常であるというのはどういうことだったかな、マンジュシュリー。
(マンジュシュリー・ミトラ)はいっ、尊師!すべては変化するということです。
そうだね。生じたものはすべて滅すると。これが無常であると。
あるいは、すべてのものは変化すると。これが無常であると。
では聞こう。昨日、サマナのグレゴール・ザムザがプラハ支部で突然毒虫になったという話はもうみんな聞いたのかな?
聞いた?こういう話はすぐに伝わるんだね(笑)
では君たちはどう思うか。ザムザはどうして毒虫になってしまったのか。
・・・ミラレパ。ミラレパはいないのか?ではヤソーダラー、答えてみろ。
(ヤソーダラー)やはりそれはカルマだと思いますけど。
カルマ。うん。では、どういうカルマだ。
(ヤソーダラー)動物界に転生するカルマが、生きているうちに現われた。
よし。では、それはいいことだと思うか、それとも悪いことだと思うか。
・・・いいことか。では、なぜだそれは。なぜだか言ってみろ。誰か言えないのか。
(ティローパ)カルマは早めに清算したほうがいい・・・
そうだな。
みんな、よく聞きなさい。ザムザには動物界に転生するカルマがあったと。
これは今回ザムザが毒虫にならなかったとしても、いずれ発現したと思うか、しなかったと思うか。した。
それならば、早めにカルマを清算しておいたほうがいいと。これはサットヴァだからであると。
いいね。
(信者)はいっ!
では今日の法話はこれで終わる。しっかり修行しなさい。カルマ落としをおそれてはいけないよ。
(信者)はい。




208 名前:中島らもの明るい悩み相談室 投稿日:2000/10/13(金) 05:53
朝、起きたら毒虫になった私
 Qある夜、とても嫌な夢を見ました。私は汗びっしょりで目を覚ますと
  体が、ヘンなのです。
  体は茶色。背中に硬い殻、腹には3段腹のような分け目があり、手足
  が節になってました。そして尻から緑色の液体が出ていました。
  どうやら、毒虫になったようなのですが、どうすればよいでしょうか?
  家族にも合わす顔がありません。
 (プラハ・グレゴール=サムザ・?歳)

 Aあなたは考え方が間違ってます。
  「人間に戻りたい」
  そう思うから悩むのです。
  あなたは、毒虫であることを誇りに思うべきです。そして、人と共存する道
  を選ぶべきです。間違ってもその毒で人を殺してはいけません。
  私は、楽器集めが趣味で、世界の楽器を所有しています。そのなかのいくつか
  の楽器には、わざとクモが入ってます。
  この中でクモがクモの巣を張るため、音がまろやかになるからだそうです。
  つまり、この楽器にはクモ   つまり、この楽器にはクモは必要不可欠なのです。
  ですから、あなたも
  「何本もの手足で素早いマッサージ(軽い毒の刺激付き)」とか
  「象が踏んでもつぶれない毒虫ショー」
  等で、人との共生を目指せばよろしいと思います。
  その為の努力は当然必要と思われるので、いまから頑張ってみては
  いかがでしょうか。
  そうすれば、家族も「一家の大黒柱の毒虫」を追い出すこともなく



222 名前:向田邦子 投稿日:2000/10/14(土) 02:58
 ハショウフウ、という言葉が怖かった。
 今では、かかる人もほとんどいないのだろうが、子供の頃は、割合身近な病気であった。
買い物から帰ってきた母が、祖母と
「角の××さんの所のお兄ちゃん、傷口から菌が入って亡くなったんですって…」
「あぁ、ハショウフウは怖いねぇ」
などと話しているのを幾度となく聞くうちに、ハショウフウ=死、という
イメージを抱いたのだろう。ちょっとでも傷を作ると、死んでしまうかも、と
口には出さずにびくびくしていた。
 ある時、珍しく父が子供たちを釣りに連れて行ったことがあった。
川に向かうまでの道は、草木がはえ放題で、子供には難儀な道であった。
ふと、父が歩みを止め
「この草が血止め草というもので、傷口によく揉んではりつけるといい。
殺菌にもなるから、覚えておきなさい」
と教えてくれた。よく見ると、どこにでもはえていそうな草だった。
それからは転べば血止め草、手を切れば血止め草と、とにかく血止め草に
思えるものを傷口にあてるようになった。
 果たしてそれらが血止め草であったか、血止め草であっても
本当に殺菌効果があったのかは定かでないが、どうにかハショウフウには
かからずに済んだ。
 ハショウフウは『破傷風』と書く、と知ったのは、女学校にあがった時分だった。

 何だかうなされたような気分で目覚めると、私は虫になっていた。
 虫、と認めたくはないが、目に映る手足は、合わせて6本。背中の感触も、何となく硬い。
どう考えても虫である。自分が虫になったというのに、何だかなつかしいような、
かなしいような、おかしいような、奇妙なものがこみあげてきた。
 ハショウフウだ。
 私の節目だらけの褐色の腹は、子供の頃に想像していた、破傷風の傷口にそっくりだった。
こんもりと盛り上がった部分はてかてかとし、ケロイドのようである。
 私は慌てて、血止め草を探そうとした。

 血止め草は、どこにあるのだろう。





342 :或毒蟲の一生 :2001/01/18(木) 20:46
 一 時代
 それは或寝臺の上だつた。三十歳の彼は悪夢から目醒めると、腹部にかけた
西洋風の掛蒲團に氣附き、彼は固い甲殻の背中を下にしてちょつとばかり頭を擡げ、
わが身を探してゐた。膨らんだ腹、弓形の固い節、か細い脚、腹の白い斑點……
 そのうちに彼はわが身が毒蟲になつてゐるのを覺つた。しかし彼は部屋の中を
熱心に見探つてゐた。四方の壁、毛織物の商品見本、雑誌から切り抜いた繪、
窓のトタン板、……
 彼は驚愕と戰ひながら、職場にある自分姿を想像して行つた。が、運命はおのづからもの憂い影の中に沈みはじめた。彼はとうとう根氣も盡き、寝臺を下りようとした。
すると何時もは右側を下にして寝てゐたのだが、今のやうな身の上になつては、どんなに力をこめても體がゆれるばかりでそれは叶はなかつた。彼は寝臺の上に佇んだまま、箪笥の上にかちかち鳴つてゐる目覺し時計を見上げた。針は妙に遅かつた。のみならず如何にも遅刻らしかつた。
「人生は一行のカフカにも若かない」
 彼は暫く寝臺の上からかう云ふ自分を見下ろしてゐた。……




404 :【きょうの森総理】 :2001/04/22(日) 19:27
 記者 総理、今朝の腰の具合はいかがですか。
 首相 うるさい。
 記者 総理失礼します、ちょっと背中が固いように見えるんですが。
 首相 歩きながら話はしません。
 記者 総理、お腹が丸くふくらんで・・・
 首相 (質問を遮り)歩きながら話さないことに決めています。
 記者 総理、よろしいでしょうか。
 首相 よろしくない。
 記者 質問します。
 首相 質問は受けません。
 記者 宮内庁が皇太子妃懐妊の兆候を発表しましたが。
 首相 おめでたいことですね。うれしい限りのニュースです。
 記者 総理、お腹が弓形の固い節で分け目をいれられたように・・・
 首相 (質問をさえぎって)歩きながらそんな話できないでしょ。
 記者 褐色の腹部が・・・
 首相 (質問をさえぎって)話しません。
 記者 節目の・・・
 首相 (質問をさえぎって)何にも話さない。
 記者 腹部なんですが・・・
 首相 (小声で)・・・。
 記者 今何と?
 首相 独り言。
 記者 総理、お話よろしいでしょうか。
 首相 だめ。
 記者 総理・・・
 首相 今ちょっとやめて。考え事してる。大事な考え事してる。
       (4月19日午前8時57分ごろ、首相官邸で)




414 :鳥肌実 :2001/05/19(土) 02:47
グレゴール・ザムザ 42歳 毒虫です
褐色のファッションリーダーです
朝日の中で銅像です
触覚は私の性感帯です
ギチギチ音を立てました
裸には自信があります
失敬だな!君!毒でもくらいたまえ!
樹木に向かって敬礼!!





418 :司馬遼太郎 :2001/05/21(月) 15:36
グレゴール・ザムザという男がいる。
かれの人生の変化は、不安な夢からめざめたある朝、自分が大きな毒虫に変
わっているのに気づいたときにはじまる。
異形、といっていい。
かれの背中は固い甲殻と化し、腹部には、弓形で固い褐色の節による分け目
が刻み込まれていた。みずからの運命におどろきつつも、
「不安な夢」
という、一種玄妙なことばでもって、自らの生き方が激変する予兆があった
ことをいいあらわしているところに、このザムザという男のおもしろみがある。
「毒虫」
とはなにか。
その前に、そもそも人間にとって毒とはなんであるかをかんがえなければ、
かれの運命を理解することはできないであろう。
ここで、
「毒」
というものの歴史的な意味について、すこし触れたい。
健康やからだに害を与える化学物質、と定義すればそれまでであるが、古今
東西の歴史の中で、毒が重要な役割を果たした例はかぞえ切れないほどある。
「悪法も法である」
というソクラテスの有名な言葉は、かれが呷った毒杯の存在とともに人々の
記憶にのこっている。
慶応二年、大の長州ぎらいであり、保守派でもあった孝明帝が崩御した時、
岩倉具視には
「かれが孝明帝を毒殺し奉ったのではないか」
という疑いがのちのちまで向けられた。むろん噂の域を出るものではないが、
もし毒殺が真実であったとすれば、日本の歴史の中でこれほど大きな意味をもっ
た毒はなかったであろう。孝明帝た毒はなかったであろう。孝明帝の崩御により、歴史は倒幕へと向かって大きく
転回することになったからである。
さらに、
「毒」
についての余談をつづける。
新選組の成立については、
「毒をもって毒を制す」
と江戸城殿中でささやかれていた。文久二年の暮から同三年の初夏頃にかけて、
京では天誅と称する暗殺が流行し、佐幕家とみなされた多くの連中が浪士たちの
襲撃を受けた。そうした過激浪士たちを幕府は、新選組という、非常警察権を持
つ超法規的組織によって制圧しようとかんがえたのである。倒幕派、佐幕派のい
ずれにとっても毒は、単なるテロルの手段を越え、政治を動かす上での重要な道
具として機能していたのである。
つまり、歴史を変えるにせよ、その変化に抵抗するにせよ、毒は
「触媒」
としての役割をもつといっていい。
はなしが、それた。
ザムザという男についてである。
要するに、
「毒虫」
とは、こうした一種の触媒たる毒をふくんだ虫ということであり、この時ザムザ
は歴史を変える触媒として運命づけられたともいえる。ザムザの運命をただ
「非条理」
とだけみることは、毒というものがもつ革命的な本質を無視した見方であるとい
わざるをえない。
だがむろん、かれはこの朝、そうした自分の歴史的意義に気づくはずもない。
この時にはまだ、たれにもわからなかったであろう。
ザムザはただ、
「やっかいなことになった」
とおもっただけのことである。



522 :火浦 功 :01/09/01 00:59 ID:41gLtufk
 朝、目が覚めたら虫だった。
とだけ書いたところで才能の限界を感じた俺は
テニスラケットをさらしに巻いて武者修行の旅に出た。
作者急病の為、火浦功先生の「変身。」は
休載いたします。



523 :ハナモゲラ :01/09/01 01:07 ID:41gLtufk
あるへれ、グレゴール・ザムザがぽはんな夢からふとさけりてみると、
ベッドのやかで自分のとかめがめっちりの、とてつもなくたまつい毒虫に
もわってしまっているのに気がついた。のるい甲殻のへなかを下に
して、ほけりてにけねっていて、ちょっとばかり頭をもこせると、
なるくにけよんだ、ぬけ色の、弓形の固いやめでせけりぬりへめた
もこしもこしふくまけった。

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